認定こども園の日本版DBS義務化ガイド|いつまでに、何をすべきか徹底解説

相談者さん

うちは小さい民間の認定こども園なんですが、やっぱり制度には対応した方がいいのでしょうか?

あかしあさん

はい!民間であるかどうかに関わらず、制度に対応する義務があります。

令和8年12月25日より、日本版DBS(こども性暴力防止法)が施行されます。

こどもと接する機会のある事業者さんは、自社がまず「対応が必要な事業者なのか」を見極め、もし対応が「義務である」となった場合は、早めに対応をしていく必要があります。

今回は、「認定こども園」に絞って見ていくことにします。

我が家でも、子がお世話になった(なんなら私も40年前にお世話になった)幼稚園が近くにありますが、限られた人員でこの制度に対応するのはさぞかし大変であろう・・と思いつつおります。

義務であると分かったら、まず何をしたらいいのか。いつまでにやるべきなのか・・!?といったところも見てみますので、ぜひ参考にしてみて下さい!

それではどうぞ!

日本版DBSで認定こども園が「義務化」の対象になる理由

今回の日本版DBS(こども性暴力防止法)において、認定こども園はまっさきに「義務」化される事業者の一つです。

小中高や保育所などと並び、日常的に、かつ密接に子どもと接する施設であり、守るべきこどもが長時間過ごす場所でもあります。

こうした場においては、民間等の事業者であっても個々の経営者の裁量に任せるのではなく、法的な強制力を持って制度へ対応することとされました。

1.こども性暴力防止法における認定こども園の位置づけ

今回の法律(こども性暴力防止法)では、施設を「義務対象」と「任意対象(認定制)」の2つに大きく分けています。

認定こども園は、小・中学校や保育所と並び、「義務対象」の施設に分類されています。

これは、認定こども園が単なるサービス業ではなく、国や自治体から認可・認定を受けた「公的な教育・保育の場」であると強く認識されているためです。

そのため、性犯罪歴の確認(DBSチェック)を行うかどうかは経営者の裁量ではなく、「行わなければ法律違反となる義務」として課せられています。

もしこの義務を怠り、後に問題が発生した場合には、経営上のリスクを負うことにもなりかねません。

2.幼稚園型・保育園型を問わず全ての園が対象

認定こども園には「幼稚園型」「保育園型」「地方裁量型」など複数の類型がありますが、その種類を問わず、全ての認定こども園が義務化の対象となります。

「うちは幼稚園に近い運営だから」

「預かり保育がメインの小規模な園だから」

といった違いは、法的な義務の重さには関係ありません。

また、チェックの対象となるのは保育士や教諭だけではなく、事務員や調理員などの職員も対象となります。

子どもと日常的に接する機会がある職員であれば、園バスの運転手や、外部委託先のスタッフまで含まれる可能性があります。

「全ての類型が対象」ということは、業界全体で横並びの対応が必要になるということです。

裏を返せば、この制度への対応が遅れることは、地域の保護者から「安全管理が不十分な園」というラベルを貼られるリスクにも直結します。

【いつから?】2026年12月までの施行スケジュールと準備期間

「まだ先の話」

「まだ周りでは誰もやっていない」

と思われがちな日本版DBSですが、実は経営サイドにとっては、2026年は急ピッチで対応をしていかなければならない

非常にタイトな1年となります。

1.施行時期の最新情報と事業者が守るべきデッドライン

こども性暴力防止法(日本版DBS)の施行日は、2026年(令和8年)12月25日に決定しました。

この日から、認定こども園には「職員の性犯罪歴の確認」と「性暴力を防ぐための安全管理体制」が法的に義務付けられます。

つまり、クリスマス明けのこの日を境に、「準備が間に合っていませんでした」=「違法状態」となる。ということです。

特に注意が必要なのは、この制度が「12/25以降に新しく採用する人」だけでなく、「今すでに働いている全ての職員」も対象になる点です。

12月の施行と同時に、既存スタッフ全員の照会手続きをスムーズに進められる状態にしておかなければなりません。

2.駆け込み準備は危険?逆算して今から着手すべき理由

なぜ、12月の施行に対して「今から」動く必要があるのでしょうか。

それは、この制度が単なる「書類の提出」ではなく、「園のルール(就業規則)の根本的な書き換え」を伴うからです。

直前になって慌てて準備をすると、以下のような深刻なトラブルを招く恐れがあります。

  1. 就業規則の不備による法的トラブル 前科が判明した職員に「配置転換」や「退職」を求める際、就業規則に根拠がなければ、不当解雇やパワーハラスメントとして訴えられるリスクがあります。規程の改訂と労働基準監督署への届け出には数ヶ月の余裕が必要です。
  2. 職員との信頼関係の崩壊 十分な説明なしに「性犯罪歴を確認する」などと突きつければ、現場の士気は著しく低下します。時間をかけて制度の趣旨を説明し、職員の理解を得るプロセスが欠かせません。
  3. システム利用(GビズID)の混雑 照会手続きには「GビズID」などのデジタルインフラを使用します。施行直前は全国の施設が一斉に登録・申請を行うため、審査待ちで数週間〜数ヶ月足止めされる事態が予想されます。

こういった混乱などが想定されるため、スムーズに対応を済ませるためには「2026年の夏」を意識して準備をすませると良いでしょう。

秋以降は採用活動も本格化するため、夏までに規程を整え、秋には職員への説明会を終えておく。逆算してスケジュールしておくことで、難しい体制作りの不安も少なくなるでしょう。

認定こども園に課せられる「3つの主要な義務」

日本版DBSへの対応は、単に「犯罪歴を調べる」だけではありません。

園という組織全体を「性暴力が起きない仕組み」にアップデートすることが求められます。

具体的には、以下の3つの柱で準備を進める必要があります。

1. 特定性犯罪歴の確認(DBSチェック)の実施

これが制度のメインとなる義務です。

採用時だけでなく、現職の全職員に対しても「性犯罪歴がないか」をこども家庭庁へ照会しなければなりません。

  • 対象範囲: 保育士や教諭だけでなく、事務員、調理員、運転手など、子どもと日常的に接する可能性のある全てのスタッフが対象です。
  • 本人の協力: 照会には職員本人の協力が必要になります。協力が得られない場合に備え、あらかじめ雇用契約や就業規則に「犯罪事実確認に対応しなければならない旨」などを明文化しておくことが不可欠です。

2. 安全確保措置(性暴力を防ぐ環境づくり)の講じ方

「チェックをしたから終わり」ではありません。

園内で性暴力を発生させないための体制整備が義務付けられます。

  • 管理者の選任: 園の中に「犯罪事実確認の管理者」、「情報管理の責任者」を置く必要があります。
  • 物理的な対策: 死角をなくすための防犯カメラの設置や、1対1の状況を作らないための業務フローの見直しなどが含まれます。
  • 研修の実施: 職員に対して、何が性暴力(あるいは不適切な関わり)に該当するのかを正しく理解できるように研修し、意識を高める場を作る必要があります。

3. 「配置転換」などの適切な人事措置の準備

万が一、職員に性犯罪歴があることが判明した場合、事業者はその職員を「子どもと接する業務」から外す義務があります。

  • 配置転換の検討: 事務作業や用務など、子どもと関わらないポストへの異動を検討します。
  • 異動先がない場合: 認定こども園のように、ほとんどの業務が子どもと接する現場では、「異動先がない」という事態が予想されます。その場合に「自宅待機」や「解雇」が法的に認められるよう、あらかじめ就業規則に厳しい条件を整備しておく必要があります。万が一労務裁判になった時に、事業者が経営を断念することになれば、元々守るべきであったこども達を守る事ができません。あらかじめ法務を整えておく事が最大の防御となることを忘れてはいけません。

【現場の懸念】現職職員への対応とプライバシー保護

日本版DBSは、これから入ってくる人だけでなく、今まさに園を支えてくれているベテラン職員や中堅職員も対象となります。

園側が「調べる」のではなく、「職員自らが証明書を取得し、園に提示する」という仕組みをどう伝え、機密をどう守るかが事業者の手腕の見せ所です。

1.既存スタッフへの制度説明と提示依頼の進め方

この制度では、職員本人がこども家庭庁に対して「特定性犯罪歴がないことの証明」を申請し、発行された結果を園に提示することになります。

実質的には個人のプライバシーに踏み込む手続きであるため、現場の心理的ハードルを下げることが重要です。

  • 「全員一律のルール」であることを強調する 特定の誰かを疑って提示を求めるのではなく、認定こども園として法に基づき「全職員が証明書を提示する仕組みになった」ことを全体会議などで丁寧に周知するようにして下さい。
  • 申請手続きのサポート オンライン(マイナポータル等)での申請が想定されるため、スマートフォンの操作に不慣れな職員への補助体制を整えるなど、心理的・事務的な負担を軽減することも必要になります。

2.前科が判明した際、配置転換先がない場合の法的リスク

もし、提示された証明書によって特定性犯罪歴があることが判明した場合、事業者はその職員を子どもから遠ざける義務があります。

認定こども園において最も深刻なのは、「子どもと接しない仕事が園内にほとんど存在しない」という問題です。

  • 法律上はまず、子どもと接触しないポストへの「配置転換」が検討されます。
  • 異動先がないという場合には、「自宅待機」や「退職勧奨」、あるいは「解雇」を検討することになります。しかし、これには就業規則に明確な根拠が必要です。 事前にこうした事態を想定した規程を整えておかなければ、正当な理由なき不当解雇として、後日労働紛争に発展するリスクが非常に高くなります。

3.提示された情報の厳重な管理体制

職員から提示された「犯罪歴がないことの証明」は、数ある個人情報の中でも「究極の機密」です。

その情報が漏洩したり、不当に扱われたりすることは、園の社会的信用を失墜させます。

  • 閲覧・管理権限の最小化 提示された内容を確認できるのは、園長や理事長、あるいは「管理者」など、最小限の特定個人に限定する体制を構築します。
  • 管理規程の策定 「提示された情報を誰が確認し、どのように記録・保管し、いつ破棄するのか」を定めた情報管理規程をあらかじめ作成し、職員に公表しておくようにしましょう。

違反した場合のペナルティと経営への影響

「うっかり準備が漏れていた」では済まされないのが、法律の厳しさです。

義務を怠った場合、認定こども園には以下のような段階的な制裁が課される可能性があります。

1.是正勧告・公表措置によるダメージ

まずは行政からの「是正勧告」が行われます。これに従わない場合、「義務に違反している園」として名称が公表されます。 昨今、保護者の防犯意識は非常に高く、一度でも「安全管理に不備がある」と公表されれば、次年度からの入園希望者が激減し、園の存続そのものが危うくなることは想像に難くありません。

2.認定取り消しリスクと保護者への説明責任

重大な違反、あるいは改善が見られない場合には、「認定こども園」としての認定取り消しという最悪のシナリオも否定できません。

また、万が一園内で問題が発生した際、DBSの手続きを怠っていたことが発覚すれば、事業者の「善管注意義務違反」を問われ、巨額の損害賠償責任を負うリスクもあります。

認定こども園が今すぐ取り組むべき「5ステップ」

施行までの時間は限られています。行政書士として推奨する、最短ルートの準備手順は以下の通りです。

  1. GビズIDの取得と環境整備 照会にはデジタルIDが必要です。直前は発行に時間がかかるため、今のうちに園名義のIDを取得しておきましょう。
  2. 「対処規程」および「情報管理規程」の策定 証明書の確認フローや、情報の保管方法を明文化します。特に、性犯罪歴が判明した際の「配置転換規定」は、労働問題に精通した専門家(弁護士や社労士)による就業規則等のチェックを受けるべきです。
  3. 職員への「制度周知」の実施 不安を払拭するため、「こどもや園を守り、職員を守るための制度である」ことを全体会議などで丁寧に伝えます。
  4. 採用フローの書き換え 求人票や面接時の説明に「日本版DBSに基づく確認を行う」旨を追加し、ミスマッチを防ぎます。
  5. 「管理者」の選任と教育 園内の責任者を決め、具体的な役割(証明書の確認、園内の死角チェックなど)を明確にします。

まとめ:日本版DBS対応は「こどものための環境整備」

日本版DBSは、その制度も複雑であり、事務の負担も少なくありません。

しかし、「こどもを守る」という本来の目的に立ち返れば、決して不要なものではありません。

園としても、信頼の置ける職員、安心な環境が準備できるということは望ましい事のはずです。「選ばれる園になる」という側面もありますが、それ以上に「こどもを取り巻く環境を少しでも安心ものにするため」に、この機を逃さず対応していきましょう。

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