みなさん、「地理的表示制度」という言葉を聞いたことがありますか?
2015年から始まった制度で、まだまだ知らない人もたくさんいらっしゃるかと思いますが、最近ではお酒の登録があったり、お菓子の登録もあったり・・実はよく知っている産品も多く登録されているのではと思います。
今日は、
「あれ?もしかして家で作っている農産物、登録できるんじゃないの!?」
という方向けに「地理的表示制度(GI)」についてご説明したいと思います。
どうぞお付き合いください!
1.地理的表示制度とは??
地理的表示制度とは、
「地理的表示保護制度」は、その地域ならではの自然的、人文的、社会的な要因の中で育まれてきた品質、社会的評価等の特性を有する産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。(引用/農林水産省HP)

はい!いまいちピンときません!
そうです。いまいちピンと来ないですね。
長年地域で生産されている農産物や加工品があった場合、これらに独自の栽培方法や加工方法がある。他の地方の同じ作物や加工品とはしっかりした区別がある。などと認められると登録することができる制度で、大きな付加価値となります。
例を見た方が早く飲み込めるかもしれません。
登録となった記念すべき第1号は青森県のあおもりカシス、第2号は兵庫県の但馬牛、第3号は同じく神戸ビーフ、第4号・第5号が北海道の夕張メロン、福岡の八女伝統本玉露と続きます。
どうでしょうか、ご存じの産品はありましたか?
令和7年3月18日現在、44都道府県で全国161産品が登録となっています。
地元の産品が・・もしかして、あれも登録になっているのかも??と気になる時は、農林水産省HPから調べて見ることができます。
こうして登録となった産品は、名称を地域の知的財産として保護されます。また、海外においても相互保護や模倣品対策の充実により保護されます。
ビジネスにおいても、国への登録やGIマークの使用、さらにこれまでの栽培方法や加工方法を明文化することで、強みや魅力をアピールすることができます。
取引先への効果的・効率的なアピール、消費者層への信頼獲得につながるツールにもなります。
2.地理的表示制度のメリットは?

それでは、地理的表示を獲得することで得られるメリットを考えて見ます。
他産品と差別化された高いブランド力を持つ
地理的表示に登録されると、地理的表示マークの使用ができるようになります。
また、類似表示などは使用ができなくなりますので、今まで「似ていて、お客さんが間違って買ってしまったみたい」といった商品があれば、分かりやすくアピールがしやすくなります(私も、土地勘のないところで買うお土産など、似て非なるものを買ったりした経験があります・・・(^_^;))。
品質や性質の違う産品などの模倣品が排除されるため、ブランド価値の維持・向上につながりますね。
ビジネスの拡大、地域活力の向上
産品そのものの販路拡大だけではありません。
これまで登録された産品の例を見ると、産品そのものの販売数だけではなく、他の食品製造、流通、観光などと言った業界とのコラボ企画やコラボ商品なども多く見られます。
複数の業界でのマーケットの拡大が見られ、地域経済や地域社会への波及効果も期待できます。
とはいえ、その産品を使って企画、営業をするのは生産者団体です。GIマークをうまく取り入れ、産品の販路拡大や地域の活性化に上手に生かして見てください。
また、知名度が上がることで興味を持ってくれる若者にも情報が渡り、後継者の確保につながったという例もあります。
さらに・・不正使用は、行政が取り締まりを行ってくれる。
不正使用の取り締まりを行政がしてくれる事も魅力です。
相互保護の枠組みにより、外国での不正使用は外国当局が取り締まりを行ってくれます。
地域団体商標制度の場合は、自らで取り締まりを行わなければなりません。
模倣品の取り締まりから始まり、注意喚起、場合によっては訴訟ということも考えられます。ブランドを守るために類似品などを取り締まることは大事ですが、とても労力のかかる作業ですし、生産者としては産品の品質向上や消費者さんへのアピールに時間を使いたいところ。
そんな中で不正使用の取り締まりを行政が行ってくれるというのはとても魅力的です。
もちろん、品質については自分たちが生産する分については責任を持って管理していくことになりますが、自らの襟を正すという面からもありがたい制度です。
このほか、ショッピングサイトにおける不正使用は、農水省が削除要請する等の対応をしてくれますし、登録商標についても登録拒絶が行われるなど、行政において取り締まりと保護が行われています。
3.商標登録とは違うの?

ここで、地域団体商標制度との違いも確認してみます。
大きな違いは、上で見たとおり「行政で取り締まってくれる」事でしょう。
商標の場合は、自らが取り締まりを行い、もし損害があるという場合は損害賠償を請求する流れとなります。
また、地理的表示の場合は、地域全体の財産として、その生産方法等の基準を登録します。これに対し、商標は、地域団体の権利として周知されている名称を登録します。産品の基準は任意で、使用権なども自由に設定することができます。
どちらも最終的には名称を登録するものではありますが、性質・目的は異なる物であるため、産地の環境や目的によってどちらかを選択、もしくは組み合わせて利用することが考えられます。
4.登録するには?
地理的表示の産品として登録されるには、要件を満たす必要があります。
特定の場所で生産されている、特性が確立されている、社会的評価がある・・等といった産品そのものの条件の他、名称からその産品の生産地や特性がわかる、といった名称に関する基準。また、生産管理を行う団体が構成されている等々といった基準なども設けられています。
これらの基準をクリアし、農林水産大臣へと申請を行います。申請後はその内容について審査を受け、補正や学識経験者の意見聴取などを経て登録へ進みます。
登録後は、申請を行った生産者団体では、生産工程の必要な手順や体制の周知等の生産行程管理業務があることも忘れてはいけません。

(出典/農林水産省ウェブサイトより)
5.最後に
これまで、地理的表示制度(GI)について概要を見てきましたが、いかがだったでしょうか。
「地元のあの産品も、登録できるんじゃないかな!?」
「以外と少なかった。こんなにおいしいのに、これはまだ登録されていない!」
というモノもたくさんあるかと思います。
私も、地元の産品のあれやこれやについて、

ええ・・、申請したら登録できるんじゃ・・!?
というモノがあったりします。
GI制度はまだ新しい制度ということもあり、その認知自体が低いかもしれませんが、最近ではお酒の登録であったり、初のお菓子(沖縄のちんすこう)が登録されたりとどんどん新しい物が入ってきています。
遠方のお客様が商品を選ぶ際の安心感につながったり、模倣品に負けないという自信につながったりと、是非活用していきたいツールです。ぜひ導入を考えて見てください。
行政書士のサポート

地理的表示(GI)の登録、魅力的ではありますがいささか面倒な点があることも確かです。
本業の合間にちょっとできる・・様な書類ではありません。
私たち行政書士は、皆様の思いを丁寧に聞き取り、内容を文書化いたします。
一緒に登録のお手伝いをさせていたければ幸いです。
お手伝いできる業務
①生産者団体における規約の整備
②特定農林水産物の歴史や実績の文書化
③特定農林水産物の特性の起案や、文献の収集・整理、とりまとめ
④特定農林水産物の生産方法、出荷基準の文書化
⑤商標登録権者がいる場合、GI登録を前提とする契約書の作成
⑥地理的表示制度(GI)登録申請書類の作成
⑦登録後サポート(他産品の動向解説や補助金情報の提供、毎年の報告書作成・提出など)
他にも、柔軟に対応いたします。
お気軽にお問い合わせください!
地理的表示保護制度(GI) 簡易チェック
- 地域と結びついた名称で、その産地の産品だけに使用されている
- その産品に、他地域のものとは異なる特性がある
- 生産地の自然的な特性(風土・気候・土壌など)、伝統製法などと結びついている
- 概ね25年以上の生産実績がある。
- 地理的表示法の対象品目である
*チェックポイントはあくまでも目安になります。実際の登録は、申請書類に基づき、農林水産省の審査が行われます。
